高速道路に自動運転カートの専用レーンを設けて荷物を運ぶ「自動物流道路」について、19日、国土交通省で有識者検討会が行われ、近く中間とりまとめを公表することが確認された。物流の2024年問題を踏まえ、プロジェクトの意義や実現に向けた検討の方向性を明示。想定するルートや、検証を行う「実験線」等も盛り込まれる。
自動物流道路は、高速道路などの地下空間や中央分離帯に専用の走行レーンを設け、小口の荷物を運ぶ自動運転カートを走らせる。人手不足や脱炭素化等のトラック輸送が抱える課題に対応可能な新たな手段として期待され、政府では10年後の実現を目標に掲げる。
19日の「第5回自動物流道路に関する検討会」(委員長=羽藤英二東京大学大学院工学系研究科教授)では、計画の具体化に向け、民間企業との連携強化を指摘する意見が出された。貨物鉄道など別の物流事業者へのヒアリングや、技術検証への民間企業の投資を促す方策の検討を求める声もあった。
検討会では、自動物流道路による効果の試算が示された。これによると、自動物流道路を東京~大阪間に導入した場合、1日に最大2・4万台分のトラック交通量の削減が見込まれる。運転手に換算すると1・7万人に相当。トラックによる年間の二酸化炭素(CO2)排出量も約193万㌧減らせる見通しだ。
現状の施工技術から想定される工事の速度や費用も試算された。地上にレーンを設ける場合は、1カ月当たりの施工スピードは約3㌔で、10㌔当たりの工事費はおおよそ254億円。地下にトンネルを整備する場合は、1カ月当たり300~600㍍の掘削で、10㌔当たり約70~800億円の費用が必要になるという。
今後、検討会では最終の取りまとめに向け、民間の事業参画を促す方策の議論を深める。より詳細な効果や需要分析、ビジネスモデルなどを検討。意欲を持つ民間の組織体の結成方式や、必要な制度設計、技術開発の検証も進めていく。