国土交通省は、高速道路の暫定2車線区間で自動車の正面衝突事故を防ぐハード対策の推進状況や対策報告を、8日の「高速道路の正面衝突事故防止対策に関する技術検討委員会」(委員長=桑原雅夫東京大学・東北大学名誉教授)の会合で報告した。反対車線への飛び出しを防ぐワイヤロープはすべての対象区間で設置が完了。これら区間では死亡事故は発生しておらず、高い事故防止効果を発揮している。長大橋梁やトンネル区間で試行導入を開始した「区画柵」は、車両の走行速度等に与える影響がほぼないことも確認された。
国交省は暫定2車線区間の正面衝突事故を防ぐため、中央分離帯のラバーポールをより安全性の高いワイヤロープへ置き換える事業を2017年度から推進。土工部と中小橋梁を対象とし、23年8月までに設置可能な約776㌔で整備を完了した。
国交省によると、23年3月末時点で計3716件のワイヤロープへの接触事故が発生。このうち対向車線への飛び出しは10件あったが、死亡事故は発生しなかった。反射材の追加設置などで視認性を高め、接触事故の防止に向けた対策を進めていることも報告された。
ワイヤロープは支柱の設置時に地中構造物を傷める可能性が指摘されていた。このため、大型の橋やトンネルでは、地中構造物への影響がより少ない「区画柵」としてセンターパイプ、センターブロックを試験的に導入している。対象は橋長50㍍以上の長大橋梁やトンネル。23年12月時点で長大橋梁11カ所(約2・2㌔)、トンネル2カ所(約0・4㌔)の設置を完了した。
国交省の報告によると、柵の設置後も自動車の走行位置や速度に大きな変化はなく、走行性に与える影響が少ないことも確認された。設置後に事故が発生していないため、事故防止や緊急時対応の有効性の検証については今後の課題とされた。
24年度内長大橋・トンネル区画柵設置完了へ
国交省は24年度内にも残る試行対象となる長大橋梁32カ所(約10㌔)、トンネル6カ所(約1㌔)の設置を完了したい考え。次回会合で検証結果をまとめ、本格設置の可否を判断する。