「総合経済対策」22日に閣議決定 補正約13兆9千億円、強靭化1兆4千億円、高速料金大口・多頻度割引の拡充1年間延長

政府は22日、物価高や能登半島地震の復旧・復興支援などを柱とする「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」を閣議決定した。裏付けとなる2024年度補正予算案一般会計の歳出規模は約13兆9000億円、民間資金と合わせた事業規模は約39兆円。

経済対策は①日本経済・地方経済の成長②物価高の克服➂国民の安心・安全の確保――の3本柱で構成。国土強靱化については「国民の安心・安全の確保」の中で5か年加速化対策の着実な推進と、その後の実施中期計画の早急な策定が盛り込まれた。補正予算の中で、5か年加速化対策の予算がどれだけ計上されるかが焦点となる。

高速道路関係では、経済成長の中で物流・人流の速達性や移動コストの緩和のため「道路ネットワークの戦略的・計画的な整備や渋滞対策を進めるとともに、高速道路の渋滞対策や観光を含む地域活性化等の観点から、混雑に応じた柔軟な料金体系の転換に取り組む」と明記。料金については、物流事業者の高速道路利用による労働生産性向上のため「高速道路料金の大口・多頻度割引の拡充措置を1年間延長する」とされた。

総合経済対策のうち、国土強靱化関係の部分を掲載する。

国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策(復旧・復興、国土強靱化関係)

第3節 国民の安心・安全の確保 ~成長型経済への移行の礎を築く~

1.自然災害からの復旧・復興

令和6年能登半島地震やその後の豪雨により度重なる被害を受けた能登半島の復旧及び創造的復興を一層加速する。道路の早期復旧、災害公営住宅の建設など住まいの確保、災害廃棄物処理の加速化等の生活環境の整備、心のケアの充実を含め被災者の生活再建を進めるとともに、産業の再建支援や雇用対策など、被災事業者のなりわいの再建、国定公園施設の復旧を進める。令和6年能登半島地震を含め、近年の自然災害で被災したインフラや病院、学校等の公共施設等の復旧を進める。今後も、甚大な豪雨被害や地震被害が発生した場合は、その復旧・復興に当たっては、これまでに策定した支援パッケージを踏まえながら、早急かつ柔軟に対応する。

東日本大震災を始めとする自然災害からの復旧・復興にも全力で取り組む。東京電力福島第一原子力発電所の廃炉等に関する高度な研究開発等を推進する。ALPS処理水の海洋放出に関し、一部の国・地域による日本産水産物の輸入停止に対し、あらゆる機会に即時撤廃を求めるとともに、国内需要の拡大や新たな輸出先の開拓、水産業の国内生産持続対策等を実施する。

2.防災・減災及び国土強靱化の推進

これまでの防災・減災及び国土強靱化の取組により、全国各地で自然被害を抑制する効果は上がってきている一方で、気候変動の影響によるリスクや大規模地震の切迫性は高まっている。激甚化・頻発化する自然災害やインフラ老朽化等の危機に対処できる人命最優先の「防災立国」を実現するため、「国土強靱化基本計画」(2023年7月28日閣議決定)に基づき、近年の資材価格の高騰の影響等を考慮しながら、必要かつ十分な予算を確保し、自助・共助・公助を適切に組み合わせ、ハード・ソフト一体となった取組を推進する。

自然災害への備えに万全を期すため、発災時に快適なトイレ、プライバシーを守るパーティション、簡易ベッド、温かい食事を速やかに提供できるよう、必要な資機材の備蓄を推進し、キッチンカー、トレーラーハウス、トイレカー等の登録制度を創設するなど、避難所環境の抜本的改善に取り組む。女性の視点を活かした避難所運営等に取り組む。避難所となる全国の学校体育館への空調整備について、ペースの倍増を目指して計画的に進める。政府の災害対応体制の強化、被災自治体・被災者への支援の強化等に向けて必要な制度見直しを行う法改正を検討し、早期に国会に提出することを目指す。防災庁の設置に向けた準備を進める。

地域におけるボランティア人材の育成に取り組む。発災時におけるNPO等の自主的な活動を支援するとともに、活動環境の整備に向けた検討を進める。消防防災力の充実強化を進める。

引き続き、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」(2020年12月11日閣議決定)に基づく取組を着実に推進する。令和6年能登半島地震等を踏まえ、あらゆる関係者が協働する流域治水等の人命・財産の被害を防止・最小化する取組、災害に強い交通ネットワーク・ライフラインの構築等の経済・国民生活を支える取組を推進する。予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策を進める。インフラ・防災分野におけるデジタル技術の活用とともに、次期静止気象衛星の整備等により、世界最高水準の観測・予報能力を持つ気象庁の機能強化を強力に推進し、線状降水帯・台風の予測精度を更に高度化するなど、災害関連情報の予測、収集、集積及び伝達の高度化・改良、新総合防災情報システムとの連携等に取り組む。

「5か年加速化対策」後も、中長期的かつ明確な見通しの下、継続的・安定的に切れ目なくこれまで以上に必要な事業が着実に進められるよう、令和6年能登半島地震の経験も踏まえつつ、「実施中期計画」策定に係る検討を最大限加速し、早急に策定する。

地域経済活性化支援機構について、次なる大規模災害に備えて財務基盤を強化するとともに、その業務期限を延長する法改正を検討し、早期に国会に提出することを目指す。

これらの取組に加え、2024年に発生した自然災害等を踏まえ、新たに取り組む必要が生じた対策も推進する。

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