[caption id="attachment_15537" align="alignleft" width="227"] 著者=杉本泰冶、福田隆文、森山哲、齋藤明、渡邊嘉男[/caption]
日本技術士会東北本部は11月8日、重大事故が発生した際の安全確保について、科学的知見に基づく欧米の手法を紹介する「安全文化」を発刊した。東日本大震災から10年を経た2021年、福島原子力事故と復興の伝承を目指し始まった「東日本大震災復興10年事業」の一環としてまとめられた一冊。
欧米に根付く「安全文化」の精神を半世紀にわたり研究する94歳の技術士・杉本泰治氏を主筆に、工学博士ら5人が共同で執筆。著述やモニタリング等々、多数の技術者が協働し、発行までに3年の月日を要した。
本書発行の礎となっているのは、1986年に発生したチェルノブイリ事故で調査にあたった国際原子力機関(IAEA)の国際原子力安全諮問グループがまとめた文書「INSAG-4」(安全文化)。
「組織と個人が共に、安全に対してきめの細かい注意力を生み出す手段」を示す同文書の邦訳を技術者に広く情報共有することで、ともすれば〝犯人探し〟に終始する日本の災害処理に「安全文化」という新たな心柱を打ち込む。
本書では「安全文化」が世界に広まった背景から、福島原子力事故の構造までを10章にわたり論説。「INSAG-4」とNRC安全文化方針表明の解説を付録とした。チェルノブイリ事故やスペースシャトルのチャレンジャー、コロンビア事故の原因究明を紹介するケーススタディなど、技術者と経営者の「その時」を通して、技術者のとるべき姿勢を考えさせられる。
なお、「東日本大震災復興10年事業」の開始にあたっては津波工学の研究者として知られている今村文彦教授と、宮城県土木部長から副知事となり復旧・復興の指揮を執った遠藤信哉氏に意見を求めている。また、本書のモニタリング委員会には、元NEXCO東日本東北支社長で震災の初動対応に尽力した熊谷和夫日本技術士会東北本部特別顧問も名を連ねる。
定価は3630円(冊/税込み)。申し込みはこちらから。