高速道路等に荷物を運搬する自動運転カートの専用走行レーンを設ける「自動物流道路」の実現方策を検討する「自動物流道路に関する検討会」は14日、国土交通省内で会合を開催。政府が目標とする今後10年での実現に向け、自動物流道路の現状について審議した。
工事費は地上部254億円、地上部70~800億円と試算
検討会では、自動物流道路を地上部と地下部に構築する場合に、現状の施工技術で想定される施工期間や概算工事費が示された。地上部の場合、中央分離帯などに自動走行する車両を走らせる「新物流システム」を採用したケースを想定。1カ月当たりの施工スピードは約3㌔で、10㌔当たりの工事費は254億円と試算された。
高速道路の地下40㍍に内径6㍍程度のトンネルを設け、自動走行車両を走らせるケースも検討された。各建設会社へのアンケートの結果、1カ月当たりの掘削スピードは300~600㍍。10㌔の施工にかかる期間は2・3年~4・8年で、工事費は70億~800億円と試算された。
東京~大阪間に自動物流道路を整備した場合の、物流の需要量についても試算された。農水産品や軽工業品、雑工業品などを輸送品目と想定した場合、同区間の物流量の約26%が自動物流道路に転換される見込み。これらに必要なトラックの台数は約2・2万~3万台に上ると見られ、物流関係の交通量を減らす効果も期待できる。
自動物流道路の実験線については、将来の完成路線の一部や物流拠点間を結ぶ路線など実際の輸送を見据えて区域を設定とすることを確認。実験は各工程の自動化、物流標準化、ロジスティクスの最適化など、物流の省人化や効率化、脱炭素化の実現に向けて必要な技術を検証する。
今夏にも自動物流道路の実現に向けた中間とりまとめを行う予定。その際、実験線の選定も行われる。
自動物流道路の概略示す 高速道の地上・地下部を活用
検討会では、NEXCO中日本から高速道路区間の地上部、地下部を活用して自動物流道路を構築する場合の概略イメージが示された。
地上部は施工の効率性を踏まえ、中央部を走行ルートとして活用。走行空間の確保に向けて、土工部は両外、橋梁部は中央部を拡幅するほか、トンネル部は既存トンネルに影響がない箇所にトンネルを新設するとした。積み荷の積み替えや積み降ろしは、本線を跨ぐことを避けるため、橋梁部にエレベータなどを設けて高架下に送ることを想定する。
地下部は、橋梁の基礎杭を避けてトンネルを設置するイメージを示した。横方向への回避には用地買収、杭間への回避には既設基礎杭の影響検討、下方向への回避には基礎杭より深い位置でのトンネル設置が必要になるとした。積み荷の積み替えや積み降ろしは、ICやSA・PAを活用してエレベータなどで地上に送るイメージが示された。
地上部、地下部を比べると、地上部の場合、拡幅工事に大幅な期間を要する可能性が高く、工事や保守管理で供用中の高速道路への影響は大きいとした。一方、地下部を採用した場合、整備費の検証は必要としながらも、供用中の高速道路への影響は少ないと見込まれた。
その上で、走行ルートの具体化に向けては、走行に必要な空間の広さや、構造・線形計算の事前の検証が必要となると結んだ。