18年度道路関係予算概算要求は、国費ベースで対前年度比16%増の1兆9371億円、事業費ベースで同9%増の4兆4298億円となった。これは「新しい日本のための優先課題推進枠」に係る計数(国費4282億円)を含んだもので、これを除いた要求額は、国費ベースで同9%減の1兆5088億円、事業費ベースで同2%減となっている。
概算要求においては、東日本大震災や熊本地震等による「被災地の復旧・復興」を加速させるとともに、「国民の安全・安心の確保」、「生産性の向上と新需要の創出による成長力の強化」、「豊かで活力ある地域づくり」の4分野に重点化。施策効果の早期実現を目指す。
「被災地の復旧・復興」では、東日本大震災という未曽有の大災害を踏まえ、20年度までの復興・創生期間における新たな枠組みに基づき、復興道路・復興支援道路などの緊急整備等により、被災地域の早期復旧・復興に全力で取り組む方針。また、熊本地震等の被災地の復旧・復興を図るため、被災した道路の災害復旧の加速や復興を支援する道路の整備を推進する。
「国民の安全・安心の確保」では、老朽化が進む道路施設について、着実な点検や措置等を適切に推進するとともに、防災・震災対策や代替性の確保のための道路ネットワークの整備、無電柱化等を推進。高速道路における安全対策や踏切対策など、利用者の安全に資する事業の推進も図っていく。
「生産性の向上と新需要の創出による成長力の強化」では、人口減少・高齢化社会の下で生産性を向上させ、経済成長を実現するため、三大都市圏環状道路の整備や空港・港湾アクセスの強化を推進する方針。加えて、既存道路の運用改善や小規模な改良など、ネットワークを賢く使う取り組みにも注力する。
これら課題に対応した施策を進めるに当たっては、①生産性の向上や安全・安心を含めた生活の質の向上等の「ストック効果の重視」②道路の機能を最大限発揮するため「賢く使う」③ICTやビッグデータ等を活用した「賢い投資」――の3点に留意。コストの徹底した縮減や事業のスピードアップのためのマネジメント強化、新技術の活用などイノベーションの社会実装を進めるとともに、既存ストックの有効活用やオープン化の推進にも積極的に取り組む方針だ。
地域・拠点の連携確保 4431億円 ミッシングリンク重点的整備など
要求額を施策別に見ると、道路の老朽化対策には2504億円を要求。12年の笹子トンネルの天井板崩落事故を受け義務化された5年に1度の定期点検が一巡するのを前に、直轄道路で点検結果を活かした効率的な修繕を推進する。地方自治体が管理する道路施設の修繕について、国による事業の代行や、民間の最新技術を用いた点検方法の導入等を進め、予算や技術面で課題を抱える自治体を支援する。
道路ネットワークによる地域・拠点の連携確保では4431億円を要求。主要都市間を結ぶ高規格幹線道路のミッシングリンクを重点的に整備し、市街地とICを結ぶアクセス道路整備への安定的な支援を行う。
効率的な物流ネットワークの強化には2784億円を盛り込んだ。圏央道など三大都市圏環状道路や東海環状自動車道等を整備し、生産性の高い物流ネットワークの構築を目指す。
17年度末で適用期限を迎える道路整備費財源特例法に関しては、18年度以降の継続を基本としつつ、道路を取り巻く政策課題への対応や地域の財政状況等を考慮し、必要な措置を講じる。概算要求と同時にまとめた税制改正要望では、民間施設と直結したスマートIC整備用に土地を取得した場合の登録免許税の特別措置創設を求めた。